「ソーシャル物理学」〜「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 〜

「ソーシャル物理学」を読みましたので、気になった部分を書いておきます。

社会物理学とは何か
社会物理学とは、情報やアイデアの流れと人々の行動の間にある、確かな数理的関係性を記述する定量的な社会科学である。
うーん、イマイチ分かりません。
通常の物理学の目標が「エネルギーの流れがどのように運動の変化をもたらすか」を理解することであるように、社会物理学は「アイデアや情報の流れがどのように行動の変化をもたらすか」を考察する。
 これなら分かる。
探求
常に創造的で深い洞察力を持つ人々は、「探求者」なのだ。彼らは長い時間をかけ、新しい人々や新しいアイデアを探求する。
しかし「最良の」人々やアイデアを見つけようとはしない。「異なる」視点をもつ人々、「異なる」アイデアを探そうとするのである。
そうした絶え間ない探求を続ける一方で、彼らはもうひとつ面白い役割を演じる。探求者はその活動を通じて、さまざまな人物と出会うことになるが、新しく見つけたアイデアを、出会った人々すべてにぶつけてみるのだ。そうやってアイデアを精査して、優れたものをふるい分けるのである。多様な視点や経験を持つことは、革新的なアイデアを育む重要な要素となる。
自分のアイデアを色んなひとに話してみるというのは、意味のあることのようです。
アイデアの流れの速さが適切なレベルであればパフォーマンスが高い
(隔離状態とエコー・チェンバーの中間)
 これは図3の解釈です。アイデアの流れの速さと投資利益率のグラフで、アイデアの流れが遅すぎる(孤立してる)と利益は下がり、流れが速すぎても似たアイデアに繰り返しされるエコー・チェンバーになり利益率はさがる、というものです。
自分の周囲のアイデアの流れを改善する方法
準備的探求
事前に専門家たちと双方向的の関係を築いており、自身の研究において重要なタスクを実行する際に、その関係に頼っていたのである。
またスターが築いているネットワークは、平均的な人物が持つネットワークとは2つの点で大きく異なっている。
第一に、スターはネットワーク内の人物とより強い関係を結んでおり、彼らから迅速かつ有益な反応を得ることができる。
第二に、スターのネットワークにはより多様な人々が含まれている。平均的な人物は、世界を自分の仕事の寒天からしか見ようとせず、ずっと同じ観点で考えてしまう。一方スターはと言うと、広範囲な立場の人々を自身のネットワークに含めており、自分以外にも顧客やライバル、マネージャの視点から物事を考えることができる。
※ここでスターとは花型研究者のこと
 優秀な人は、意識的か無意識的かはともかく、他人をうまく利用しているということか。
良い結果を生む「探求」のポイント
ここでの探求=アイデアや情報を収集するためにソーシャルネットワークを活用する
つながりすぎた世界では、アイデアの流れが早過ぎる
もし私達が共同作業を成功させたければ、理解しなければならないのは、「アイデアの流れ」がどの程度発生しているか、あるいはそれがどの程度妨げられているかなのである。
 大企業にありがちな、縦割りの組織で、背中合わせの席なのにお互いに何やってるか知らない、会話もないと言う状況は非常にもったいないということでしょう。
アイデアの流れ
社会的学習や社会的圧力といった手段により、ソーシャルネットワークを通じて行為や考え方が伝搬していくこと。アイデアの流れを左右するのは、ソーシャル・ネットワークの構造、アイデアを伝える人物の社会的影響力の強さ、そしてアイデアを伝えられる側の人物の新しいアイデアに対する感受性の強さといった要因である。
健康習慣、政治志向、消費活動というこれら3つの例において、周囲の人々の行動に接することは、直接的なものかどうかを問わず、アイデアの流れに大きな影響を与えていた。その力の大きさは、遺伝子が行動に及ぼす影響や、IQが学業成績に及ぼす影響とほぼ等しい。さらにすべての研究において、周囲の行動への接触が、アイデアの流れを規定する最大の要因となっていた。
 状況を変えたいとき、普段付き合うひとを変えるというのは意味のある行動のひとつなのでしょう。
エンゲージメント
仲間同士のグループ内で主に発生する「社会的な学習」を意味する。「行動規範」の形成や、さらにそうした規範の順守を求める「社会的圧力」の形成へとつながっていくのが一般的。
情報だけではモチベーションを高める力が弱い。
同じ集団に属するメンバーが新しいアイデアを受け入れているのを目にするだけで、それに加わって他のメンバーと協力しようというモチベーションが生まれる。
 この人がそうしてるんなら多分大丈夫かな、みたいな思考回路は確かにありますね。
ソーシャルネットワークインセンティブは、社会的圧力を生み、特定のアイデアに関するやり取りを増加させ、その結果として人々がアイデアを行動として定着させる可能性を増やして、最終的にアイデアの流れを変化させるものである。従来型の個人にたいする市場型インセンティブに比べおよそ4倍の効果を持っている。
人々に協力を促す場合、社会物理学のアプローチでは、個人を対象にした市場型のインセンティブを活用したり、新たな情報を付与したりするのではなく、ソーシャルネットワークインセンティブを活用する。つまり私たちは、個人としての人間に注目し、その行動を変えようとするのではなく、人々のつながりのあり方を変えることを重視するのである。その理由は明確だ。他人との交流は人間にとって非常に大きな意味を持つものであるため、そうした交流を利用することで、変化に向けた社会的圧力を生み出すことができるのだ。エンゲージメント(コミュニティのメンバー間で繰り返し行われる協力的な交流)は、協調的な行動へと向かう流れをもたらす。
本のなかでは、レッドバルーンチャレンジの話が面白かったです。これは米国のどこかに設置された10個の赤い風船を見つけるコンテストで、個人で探すのはほぼ不可能なので、じゃあどうするか?というものです。報酬は4万ドルです。
ここで、ふつうの社会的インセンティブ型のアプローチだったら、1つの風船につき4000ドルを、見つけた人に与えるというふうにするでしょう。一方、ソーシャル・ネットワークインセンティブを利用する方法は、たとえば、個々の風船の正確な位置を最初に伝えてくれた人物に2000ドルを支払う。そして最終的な情報提供者を仲間に引き入れた紹介者にも1000ドルを支払い、その紹介者の紹介者にも500ドルを支払い、そのまた紹介者にも250ドルを支払い、、という形にするのだそう。そうすることで、直接報酬だけでは競争相手を減らすために情報が広がらないという問題も回避でき、直接見つけることが出来ない米国外に在住するひとも仲間になれるということにもなる。この話は面白かったです。
エンゲージメント(繰り返し行われる協調的な交流)は信頼感を醸成し、他人との関係の価値を高め、それが結果として協調行動に必要な社会的圧力の土台となる。言い換えれば、エンゲージメントは文化をつくるのだ。
集団の知性を予測するのに最も役立つ要素は、会話の参加者が平等に発信しているかどうか。
少数の人物が会話を支配しているグループは、皆が発言しているグループよりも集団的知性が低かった。
 まあこれは耳が痛いという会社多いでしょう。
アイデアの流れのパターンそれ自体が、他のあらゆる要素よりも、集団のパフォーマンスに大きく影響している。
対面のコミュニケーションを通じたエンゲージメントが生産性に大きく影響する。
探求:チームメンバーが他のチームと交流する
エンゲージメント:同じチーム内でメンバーが交流する
交流のパターンを視覚的に示すことで、従業員やマネージャがアイデアの流れを改善させることが可能になり、それによって組織の生産性や創造的な成果を改善できる。
ということで、ややアカデミックな側面もある本ですが、扱っているテーマは社会人の教養として結構重要な要素ではないかと思いました。オススメの本です。
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