製品評価をつうじた Win-Win の関係の作り方(1/2)

高い買い物には時間がかかる

ここでは B-to-B でのソフトウェア販売を想定しています。
複雑なソフトウェア、特に特定用途向けのソフトウェアは値段が高いため、世の中のクチコミだけでは購入の判断に至るのはなかなか難しいものがあります。そもそも、特定用途向けだけに一般のPCユーザー向けに比べ圧倒的にユーザー数が小さく、信頼に足るクチコミのサンプル数が少ないです。

購入側の担当者は、かなり高額な買い物となるソフトウェアの購入について社内で同意を取り付けるための理由付けとして、その製品が本当に自社内で評価してみる、というプロセスが発生します。評価の結果、その製品を購入する価値がある、と担当者が判断した場合には、社内での承認を得るためのプロセス(会社によっていろいろあると思います)を経て、購入に至ります。

この一連のプロセスのなかで登場するプレイヤーは、

  • 購入側の企業(いろんな人が絡みますが一括りにひとりの人格として扱います)
  • 購入側担当者
  • ソフトウェアベンダ側担当者
  • ソフトウェアベンダ企業(こちらもいろんな人絡みますが詳細はのちほど)

といったものですが、ここでは、購入側担当者と、ソフトウェアベンダ側担当者がそれぞれ留意すべき点について考えてみました。まずは購入する側から。ここではベンダからみてポテンシャルカスタマーのことを購入側としています。

購入側担当者が気をつけること

  1. 窓口を一本化しておくこと
  2. 評価期間、評価項目をあらかじめ明確化しておくこと
  3. 週1くらいでベンダ側と進捗を報告しあうこと
  4. 自社のマネジメント層と、ベンダのマネジメント層を絡めること

1. 窓口を一本化しておくこと

ベンダ側からの各種連絡は営業担当者だったりFAEだったり、または R&D エンジニアから直接くるということがあり得るわけですが、購入側企業としては窓口は全てひとりの担当者を経由して、そこから購入側企業内の人に展開していく、というパスにしておいたほうが良いです。逆の情報の流れについても同じです。購入側企業内からベンダへの情報は、この担当者を経由して出て行くというかたちにしたほうが良いです。

2. 評価期間、評価項目をあらかじめ明確化しておくこと

評価は、自社内でもベンダ側でもそれなりのリソースを食うものですから、評価のクライテリアを明確にしたうえで、どのくらいの時期までに評価を完了するのかを購入側企業が明確にしておくことは重要です。ベンダに対しては、評価へのやる気を示すことになります。
そもそも評価項目もあいまいな状態で始めても、評価担当者の興味だけであっちこっち行ってしまって評価作業が迷走してしまいます。また、実際の評価作業が担当自身ではなく別のエンジニアが行う可能性もあるので、その場合にも評価の方向がグダグダになってしまうことがあります。
また、もしなんらかの理由で、評価予定期間内でやりたいことが全部できなかったとしても、期間を守ってその間でできたことを一旦まとめるべきです。

3. 週1くらいでベンダ側と進捗を報告しあうこと

Face-to-Face がベストですが、そうでなければ、リモート会議で簡単に状況を報告しあいます。これは担当者からみると、ベンダのお尻をたたいてやることはやらせるという効果がありますし、ベンダ側としては評価の進捗をチェックして、もし遅れているようならベンダ側として評価をヘルプするようなことも検討できます。
進捗管理をするための担当者の仕事としては、評価中にでた問題点についてのベンダへの報告やその対処についてトラッキングしておくべきです(のちに評価報告など作成する際に楽ですし、進捗の見える化は第三者にとっても有益です)。技術的問題については、たいていベンダ側でナンバリングされている(たとえば Issue-20256 とか)はずですから、その番号をベンダ側と共有させてもらって、その問題がどう解決されるかをモニターしていきます。

4. 自社のマネジメント層と、ベンダのマネジメント層を絡めること

評価を完了したら、社内検討用(あるいは稟議にむけて)評価報告書相当のものを作ることになるでしょうが、これは社内だけではなく、ベンダ側にもちゃんと報告してあげるべきです。もちろん社外秘になるようなデータは除いて、ということになるでしょう。
ここでおすすめなのは、メールなんかでサクッと報告するのではなく、評価が完了したあと出来るだけ早い時期に、ベンダーに対し評価報告会をしてあげるというものです。できれば、ベンダー側のマネジメントと自社のマネジメントに同席してもらうのです。ベンダ側からは CEO と VP of R&D あたりが出てきてくれるとベストです。ここでの目的は、現時点の評価結果にかかわらず、ベンダのエグゼクティブと知り合って仲良くなっておくことです。これによって、将来無理がきくようになります。
もちろん本題は評価報告です。
評価結果がOKで、自社のマネジメントもそれで購入OKならば、あとは導入時期、価格、契約詳細の話になるでしょうから、それはまた別途という話になるかもしれません。ただOKの場合でも要望事項というのはあるはずですから、そこはプライオリティづけしつつ、明確化してベンダーに要求することです。良い事も悪い事もしっかりはっきりベンダにフィードバックしてあげることが重要です。
評価結果がNGの場合は、どういう点でNGだったかを明確にし、逆にいえばこうなれば購入するに値する、ということをはっきりいってあげれば、ベンダーのためにもなります。
結果の OK/NG にかかわらず、プレゼンのなかで、評価過程でお世話になったベンダ担当者の労をねぎらうことは忘れないでおきましょう。彼らはエクゼクティブのまえで褒めてもらえることはとても大事なことなのです。留意しておくべきことは、

  • ベンダーと仲良くしておくことは、将来的に得をすることはあっても損をすることはない
  • ベンダーはきちんとフィードバックしてくれるユーザーを大事にする
  • ベンダーはお金をちらつかせると動きが早くなる

ということです。
ベンダーと仲良くして、自分たちの要求を通してくれるようになれば、その後のアップデートで自分たち好みのソフトウェアにしていくことができます。

(つづく)

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