[Book] 日本人をやめる方法 (6)

日本人をやめる方法

第七章 日本人礼賛論のからくり

日本人が特殊独特であるかどうかは別として、特殊だ独特だという言説を繰り返し頭の中にたたきこまれているという点で、日本人は世界でもめずらしい特殊独特な情報環境の中で暮らしている。

日本人は、他とはちょっと違うという認識はみんな持っているが、優秀であるか劣等であるかの認識は多分人それぞれだと思う。自身の民族は優秀だ、他とは違うという認識をしたがる傾向は、一連のナチスの行動などをみると他民族でもあることだと思うが、それにしても、日本人は特殊だという言説を繰り返し刷り込まれる環境にある、という点が特殊なようだ。

日本礼賛論のなかで過剰に協調されている面、ほとんど忘れられている面として次の三点が挙げられている。

  1. 日本人の思考や行動が、どこまで気分的・情緒的・非合理的であり、どこまで功利的・計算的・合目的的であるか
  2. 日本人の価値観とか、日本文化とか呼ばれているものの仲で、どこまでが自由意志にもとづいた選択によるものか
  3. 日本の成功の裏で、日本人がどのような「社会的代価」を払っているのかを見定めておくこと

ま、いいことばっかりじゃないよ、ということか。そして重要だと思うのが次の点。

日本の不成功が、成功の原因または結果である可能性について、ほとんど考慮が払われていない。例えば、日本の学生の論文は、先生の指導に従うだけで、独創性に欠けている、とボーゲルはいっているのだが、独創性の不足は、彼がほめちぎっている日本人の自己規制の産物ではないだろうか。

彼の考える成功現象と失敗現象とは、相互連関しているはずである。否定面が肯定面からポツンと独立して存在しているのではない。

「悪い面に学ばずによい面だけを取り入れよう」という議論は、2つの面の相互依存性を無視しており、ここにボーゲル理論の落とし穴がある。

物事に良い面と悪い面が共存するが、はじめに答えありきの思考回路だと、片方しかみえなくなる、ということか。日本の成功の裏には、多くの犠牲がある。日本の悪い面が見えた場合、その原因は成功要素にある。

隣の芝は青い、ってことだね。どこの国にも良い面と悪い面がある。悪い面の本質は他国の人間だとちょっとわかりにくいところがあるから、良い面が協調されてみえる。一方で、他国の悪い面を想像してビビってしまうと、一応悪い面も含めて感じがつかめている日本のほうが居心地がいいな、と考えてしまうのが、スーパードメスティック日本人の思考回路ではないか。

タイトルとURLをコピーしました