読書メモ “「超」入門 失敗の本質”

この本のベースになっている、”失敗の本質”のほうは、ちょっと難しい本だったので、それを分かり易く噛み砕いて紹介してくれるこの本は、とても良かったです。オリジナルのほうは難しいな、と思ったひとは、この「超」入門のほうをお勧めします。

現代の日本人の必読本だと思います。

気になったところをメモしておきます。

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01

一つだけはっきりしていることは、「戦略」が明確であれば目標達成を加速させる効果を生み、逆に曖昧ならば混乱と敗北を生み出すことです。

「失敗の本質」で指摘される日本軍の迷走から見えること。その一つは、「目標達成につながらない勝利」の存在です。

戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと

02

戦略のミスは戦術でカバーできない

戦略とは追いかける指標のことである

勝利につながる「指標」をいかに選ぶかが戦略である。性能面や価格で一時的に勝利してお、より有利な指標が現れれば最終的な勝利にはつながらない。

03

意識せずに発見した「経験則による成功法則」では、適用すべき範囲を判断することが難しく、結果として過去の成功事例の教条主義に陥りやすい

体験的学習で一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。指標を理解していない勝利は継続できない。

04

「戦略となる指標」を取り出すことをせず、「体験そのものを再現」することに執着すると、目の前の勝利と同じ型を追いかけることにつながります。

体験的学習や偶然による指標発見は、いずれ新しい指標(戦略)に敗れる。勝利体験の再現をするだけでなく、さらに有効な指標を見つけることが大切。競合と同じ指標を追いかけても、いずれ敗北する。

05

ゲームのルールを変えた者だけが勝つ

ビルゲイツやスティーブジョブズのような経営者が、なぜ日本で生まれないのか。その理由はゲームのルール自体を変えるような破壊的な発想ではなく、型の習熟と改善を基本とする日本的思考と関係しているのかもしれません。

06

創造的破壊を生み出す3つの要素
1、ヒトによる創造的破壊
2、技術による創造的破壊
3、運用方法による創造的破壊

07

シングルループ学習とは、目標や問題の基本構造が、自らの想定をは違っている、という疑問を持たない学習スタイル

ダブルループ学習とは、想定した目標と問題自体が間違っているのではないか、という疑問・検討を含めた学習スタイル

08

敵の指標が効果を発揮しない領域を探す

イノベーションを創造する3ステップ
1、戦場の勝敗を支配している「既存の指標」を発見する
2、敵が使いこなしている指標を「無効化」する
3、支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う

イノベーションとは、支配的な指標を差し替えられる「新しい指標」で戦うことである。同じ指標を追いかけるだけではいつか敗北する。家電の「単純な高性能・高価格」はすでに世界市場の有効指標ではなくなった。

09

日本人は体験的学習から過去いくつおのイノベーションを成し遂げたが、計画的に設計されたイノベーションを創造するためには、既存の指標を見抜き、それを無効化する新しい指標をダブルループ学習で見出す必要がある。

10

イノベーションは既存の戦略を破壊するために生み出されており、効果を失った指標を追い続けることは、他社のイノベーションの餌食となることを意味する。高性能とイノベーションは偶然重なることもあるが、本来は別の存在である。

11 特になし

12

戦略を「以前の成功体験をコピー・拡大生産すること」であると誤認すれば、環境変化に対応できない精神状態に陥る。「型のみを伝承」することで、本来必要な勝利への変化を全否定する歪んだ集団になってしまう。常に「勝利の本質」を問い続けられる集団を目指すべき。

13

技術的イノベーション自体は、個人の研究者・科学者が行うことができても、成果に育てられるかどうかは、組織内に浸透する意識構造に非情なまでに左右されてしまいます。

14

日本軍の組織運営の失敗に共通する2点:
1、上層部が「自分たちの理解していない現場」を蔑視している
2、上層部が「現場の優秀な人間の意見」を参照しない

あなたが「知らない」という理由だけで、現場にある能力を蔑視してはいけない。優れた点を現場に見つけたら自主性・独立性を尊重し、最大・最高の成果を挙げさせる。

15

米海軍トップの現場活用法
過酷な最前線を体験したスタッフを、中央作戦部に引き戻して活躍させる。

16

厳しい課題に直面していたら、「お飾り人事」を徹底排除し、課題と配置人材の最適化を図ること。能力のない人物を社内の要職に放置すれば、競合企業を有利にさせる以外の効能はない。

17

組織の階層を伝ってトップに届く情報は、フィルタリングされ担当者の恣意的な脚色、都合のいい部分などが強調されていることが多い。問題意識の高さから、優れたアンテナを持ったトップは、激戦地(利益の最前線)を常に自らの目と耳で確認すべき。

18

チャンスを潰す人の3つの特徴
1、自分が信じたいことを補強してくれる事実だけを見る
2、他人の能力を信じず、理解する姿勢がない
3、階級の上下を超えて、他者の視点を活用することを知らない

失敗するリーダーに共通するのは、周囲の意見や目の前の現実を否定し、自己の意見や思い込みに固執しすぎてしまうことです。

19

「間違った勝利の条件」を組織に強要するリーダーは集団に混乱を招き、惨めな敗北を誘発させているだけである。求める勝利を得るためには、「正しい勝利の条件」としての因果関係に、繊細かつ最大限の注意を払うべきである。

20

「居心地の良さ」とは正反対の、成果を獲得するための緊張感、使命感、危機感を維持できる「不均衡を生み出す」組織が生き残る。指揮をとる人間には「見たくない問題を解決する覚悟の強さ」が何より要求される。

21

空気の醸成による悪影響:
1、本来、「それとこれとは話が別」という指摘を拒否する
2、1点の正論のみで、問題全体に疑問を持たせず染め抜いてしまう

議論の「影響比率」を締めださせるな
影響する比率が1%にも満たないことを取り上げて、問題自体を一方的に決めつけてしまう空気の醸成は、断固見破らなければならないのです。

22

方向転換を妨げる4つの要素
1、多くの犠牲を払ったプロジェクトほど撤退が難しい
2、「未解決の真理的苦しさ」から安易に逃げている
3、建設的な議論を封じる誤った人事評価制度
4、「こうであってほしい」という幻想を共有する恐ろしさ

状況が実態より良いようなフリをすることは、最終的にはほぼ確実に破滅につながる

23

リスクを隠すと悲劇は増大する

実際に起こらなくても得はしていない
幸運にもリスクをかわすことができた場合、対策のコストや労力もかからないことで、リスク隠しは得をしたのでしょうか?
プロジェクトが脆弱であることに一切変わりがありません。むしろリスク隠しのままリスクを偶然かわせたことは、次回以降のリスク発言性を逆に高めてしまいます。

耳に痛い情報を持ってくる人物を絶対に遠ざけない

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この本では、日本軍上層部の度重なる失敗とその背景が紹介されています。その原因となる要素は、必ずしも日本人だけが持つわけではないでしょうが、日本人は特に、そういった要因をベースに変な方向に行きがちだと思います。そしてそういう特性は、21世紀の今でも受け継がれているように見えます。特に年配者が多い大企業では。

 

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